■ぐらはむがやって来た、

プラナカップのゲストで来日していたアメリカのビッグスターデイブ・グラハムが10月22日火曜日に東京の御岳ボルダ−を訪れ、室井登喜男、平山ユージの大御所、そして若手成長株の大西良治らと僅かな時間だが日本の岩を楽しんだ。

来日以降雨の日が続きこの日まで一度も屋外の岩に出られなかったデイブ、だが「プラスチックはヤダ!」との御希望で日本のジムにも全然いかず、故障のため3週間ほど岩から遠ざかっていたとの事で指のタコがすっかり無くなっている状態、御岳のチャート質のマイクロチップを触るにはかなりよろしくない指の状態らしかった。
おまけに訪れた忍者返しの岩はところどころ水がしみ出しておりコンディションはいまひとつでスタンダードな課題「忍者返し」を登った後は、久しぶりの良い天気の下、セッションとおしゃべりで楽しい一日となるのであった。

気軽にサインに応じるデイブ

しっかしデイブ君、ヒョロイ。日本人も含めていままでこれほどヒョロイクライマーは見た事が無いと思うくらいヒョロい。登りのタイプが良く似ていて体型もかなり似ている三由 野あたりと比べてもデイブ君のほうがさらにヒョロイのである、そんなだから最近またバルクアップしギリシャ彫刻の域に達しつつある平山がとなりに立つと、「これが同じクライマー?」と思うほどの体型差である。
だいたいどんなに細身のクライマーでも肩にだけは筋肉が付いているものだがそれがどうにも見当たらないのだ、これじゃどう見ても運動嫌いのフツーの人だ、あげく白いジャン!(そりゃ白人だもん)。さすがに背筋は僅かに浮き上がっているものの登らない限り特に目立つわけでもないし…、だのに、ああだのに・・・。
あらためてクライミングの奥深さを感じてしまう。

筋肉らしきモノがほとんど見当たらないんだけど…

ちなみに彼はどうも記憶力が良いらしい、日本に来てから教えてもらったと言う”ひらがな”のサインも卒なく綺麗にこなす、なんでもひらがなを覚えるのはホールドのつながりを覚えるのに似ているそうで、このヘンにも非凡な才能を感じさせるデイブ君なのである。

だが彼のもっとも面白い点はなんと言ってもコレである。
登って無い時は誰かをつかまえてひたすら喋っている。そう、もの凄いオシャベリ。これには同行の某氏もかなりヘキエキと言うかビビっていたと言うか…、とにかく実際ものすんごいマシンガントーカーで帰りの遊歩道を歩いていてもデイブ君の声が途切れる事はついになかった。

これが直筆サイン

そんなわけでデイブ・グラハムはその強烈な記録から抱きがちなストイックなイメージが全くない、めちゃめちゃノリのいいアメリカ青年だった。はっきり言って欧米人の有名クライマーでここまで取っ付きやすいヤツに会ったのは個人的にははじめてであった。
帰り際にたまたまその場にいた人たちを自分から一人一人捕まえては「は〜い、僕グラハム。君は〜?」とまんべんなく話し掛けるあのパワー(?)が彼のクライミングの秘密なんだか全然関係無いんだかは誰にもわからない…。(終)

(P)