日本に本格的な商業クライミングジムが出現してはや数年、いまや首都圏には「ホントにこんなに必要か?」と思うくらいジムがニョキニョキと生えている。最近は一頃見られた人工壁に対する偏見もだいぶなくなり多くのクライマーがその恩恵を素直に享受している、ボルダ−エリアでのみひたすらトライに明け暮れる経済効率の悪い私達専業ボルダラ−も近頃はリードクライマーよりでかい顔ができるようになってきた。(私だけか?) |
そう、ボルダ−グレードですよ!グレード!だんな! 「あたしい、週に2〜3回はジム通いしてるのにい、ちいっともうまくならないのお〜、あたしってえ〜、才能ないのかもお〜」 なあんて言ってるあなた!それは大間違いかもしれないのだ。実は、かく言うわたしもその一人だった。わたしの場合、とある有名なジムがまだ本店しかなかった数年前、当時そこのボルダ−で登れた上限グレードと、 |
わたしも自分の力くらいだいたい知っているつもりだ、昔のわたしと今(当時)のわたしじゃチト違う、肉はついたがパワーもついた、当然疑問に思ってまわりのボルダラ−達数人の意見を聞くと、他のジムがホームグラウンドの人の多くがやはり同じように感じていたことがわかった、どうやら気のせいではなかったらしい。(ああ、よかった) |
これからボルダ−グレードのジム間格差がさらに問題になっていくだろう、帰ってきたフォンテ−ヌブロー組みの多くが日本のジムのボルダ−グレードが異常にカライことを指摘している、グレードを決める際には一部の上級者任せにするのではなく、そのクラスを中心にトライする人達の多くの意見を聞く配慮が常連さんやジム管理者にもさらに必要とされるかもしれない。 |
それでもトレーニングで保持力を高めることで弱点を補ってきた。 1. 指を鍛えて握力2000kgになるまで我慢する。 2. 体重2gになるまで減量してヒラヒラ飛ぶ。 普通どっちも無理だ。 |
そこで持久力で差をつける事の難しいショートボルダ−でこの問題を解決する唯一の方法、それは人工壁コンペにリーチによる階級制を導入することだ。ただし自然壁の課題については前序のように「人類が自然に出来たデコボコをよじ登って頂上に辿り着く事」のままなので |
ここでは従来のリードコンペの欠点を少し述べておこう、それによって今のクライミング界のもり下がりが決して不況だけのせいではないことをあなたは悟るだろう、そしてこの章を読み終わるころにはボルダ−コンペが競技スポーツとしては現在のリードコンペより数段優れている事を納得するはずだ。
1.競技者自身が自らの安全確保を担当している。
これは言うまでも無くクリップの事。ランニングビレ−のクリップは純粋なクライミング行為とは無関係だ、ただ安全確保のために仕方なくやっているだけの事。これがなければクライマーは登ることだけに集中できる。はたして他に競技者自身が自分の安全を確保せざるお得ないような中途半端な現代スポーツがどれだけあるだろうか?ボルダリングならば多少危険なム−ブでも体操競技のように隣で手をひろげてサポートしてやるだけで競技者は競技に集中できる。
2.スピードが無い。
たとえルート中に見せ場のランジを入れたとしてもそこまで登る間は今までと同じ、クリップの失敗による危険なフォールを避けるために要所にはガバをつけざるおえないため、時間ぎりぎりまでレストされたりするともう退屈で目もあてられない。(ちなみにクライマーじゃない友人をさそってコンペを観にいっても彼等はほとんど途中で帰ってしまう。)これに対してボルダリングは一般にム−ブが難しく長々とレストすることなどほとんど無い、しかもクリップから解放されるので課題にダイナミックな動きをふんだんに盛り込めるため、リードよりスピード感がある。
3.ルールがわかりずらい。
基本的にデカイ壁を一人づつ登るので、観客は今までの選手がどのホールドを保持したかなんて憶えちゃいない。わけの分からないうちに順位が決まっている。4.何が難しいのかやってみないと理解できない。
いま持っているホールドがどれほどワルイかなんて10m以上下にいる観客(しかも素人)に分かるわけが無い、だって私もわかんないくらいだ。まして苦しむクライマーの表情も見えないので人間味もない。(もっともこれに関しては上部からビデオカメラででも中継してやれば良いのだが、あの大掛かりな大倉カップの時でさえやらなかったのだから、JFAはコンペをショーアップする気は初めからないらしい、楽しいのは登っている人だけ、そんなものをわざわざ誰が観に来るのか?まして金なんて払わない、客が来なきゃスポンサーもつかない、入場料もとれなきゃ選手達の出場料が高くなる、これがクライミング界の為になるのか?)対してボルダリングは高さが低く競技者の動きやホールドも目の前で見られる。
5.金がかかる。
この不況時にデカイ壁が必要なことが一つ、そしてオンサイトの呪縛があるためそのデカイ壁を隠したり、隔離された控え室が必要で、ラウンドごとのホールドの組み換えにも手間と時間がかかる。挙げ句のはてにある程度の高さがある大きい会場が必要。
6.うまいヤツが勝つとナゼかおもしろくない。
観客の多くが派手な墜落を期待しているのにうまいヤツは登ってしまう。一見ボルダリングも一緒のような気がするが、実は一般に素人の観客は流れるような美しいム−ブなんてあんまり期待していないのだ、ブルブル震える手でホールドを握り締め「ウガ−!」と叫びながら終了点をとり損ねて派手にぶっ飛んでいくアグレッシブなヤツのほうが見てて楽しい。(ボルダラーにはこういうヤツが多い?)
7.軽い子供が勝つ、この道ン十年のおじさんは泣く。
オンサイトリード式のコンペだと一度で順位をバラけさせるためにどうしてもはっきりした核心部を作りにくい。(みんなそこで落ちちゃうと順位が付かないからね)するとどうしてもム−ブをこなすより持久力の戦いになりやすい、言ってみればガマン大会だ。そうなれば筋持久力に優れるか体の軽いヤツが勝つ、子供ばかりが勝つようなスポーツを、見る人がどれほどおもしろいと思うだろうか?
チラっと挙げただけでも従来のリードクライミングのコンペにはこれだけの問題点がある。しかもほとんどが構造的な欠陥で事は深刻だ、対してボルダリングの大きな問題点として挙げられるのは必要なギアの種類が少ない為にメーカーや代理店、及びその広告がほしい雑誌社が商売になりにくいぐらいだ、まあこれは今ボルダリングの普及にもっとも大きな壁であるが反面、「少ない投資で始められるスポーツ」という大きなメリットでもあるのだ。どうだ、不況の時代にもピッタリではないか!しかもこの問題もボルダリング人口が増えれば自然と解決してしまうのだ。
このようにボルダリングはスポーツクライミングの理想形である。
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