ボルダリングFAQ

◆ 基礎/ルール編 ◆

ボルダリングとはこんなスポーツです | 岩場での一般的なルール | 人工壁での一般的なルール
コンペティションのルール | 簡単すぎる用語集(別ウィンドウ) | グレード(難易度)とは?(別ウィンドウ)
ボルダリング/クライミングの”記録”って何?

 
◆ 体験編 ◆

ボルダリングを体験したいんだけど? | 必要なものは? | 近くにジムがない人は?

 
◆ 環境編(岩場に行く前に必読!)◆

岩場利用に関する参考情報(環境編)
岩場利用に関する参考情報(ギア編)

 
◆ その他 ◆
フリークライミング用語集
(かみむらさんのページ)
 


 ボルダリングとはこんなスポーツです。

●ロープを使わない=シンプル

 「ボルダリング」とは、「フリークライミング」のもっともシンプルなスタイルの一つです。

「ボルダリング」とは、ロープによる確保を必要としない、高さ数mほどの岩をフリークライミング用シューズ(ロックシューズ)と手につける汗止めの粉(チョークパウダー)だけを使って登るものです。

●一人でもできる、自由。

 ロープを使うフリークライミングと違い、複雑なビレー(確保)システムを覚える必要はありません。
ビレーが必要ない事で一人でも楽しむ事ができます。また、高いところが苦手な方もそれなりの高さの課題を選ぶ事で比較的容易に始められます。

 仲間とワイワイやりながら代わる代わるトライしたり(ボルダーセッション)、イヤになったらひなたぼっこでもしたり、初心者も上級者もお互いに気がねをしないでそれぞれのレベルの課題を自由に楽しむ事ができます。

初心者が取り付きやすい。

 このため、初心者の方でも正しい指導を受け、着地など、危険要素を理解していればロープクライミングに比べ比較的気軽に始める事ができるでしょう。
 最近ではその手軽さからか各地の公園や幼稚園にまでボルダリング壁が設置され、次世代のスポーツクライミングの主流として普及が期待されています。

●高いスポーツ性。

 また上級者にとってはすべてのクライミングのなかでもっとも「ム−ブ(動き)」の難しいスタイルとして、その高いスポーツ性が人気を呼んでいます。

豆知識:
「フリークライミング」がアメリカ合衆国ヨセミテ渓谷を中心に1960〜1970年代ごろにクライミングの一つのジャンルとして定着する以前から、ヨーロッパの一部では今日「ボルダリング」と呼ばれているスタイルが確立していました。その歴史は一説には一世紀近いとも言われています。

 ボルダリングでは登る岩の事を『ボルダー』(稀にボルダリング自体を簡略化してこう呼ぶ事もあります)と呼び、誰かによってボルダリングによって登られたラインをプロブレム(日本語では”課題”)と呼びます。(ロープクライミングで”ルート”と呼ばれているものと同じです)

(また特に規定はありませんが5〜7mほどの高さのあるボルダーを「ハイボルダー」と呼ぶ事もあります)

そしてクライミングをする人を『クライマー』と呼ぶように、ボルダリングをする人の事を『ボルダラー』と呼びます。

これらの点から、ボルダラーは同時にクライマーでもありますが、クライマーであってもボルダリングをしない人はボルダラーとは呼ばれません。

人工壁でのコンペティション(大阪/クラックス、ボルパ’99でのランジコンテスト) ボルダ−セッション(東京/奥多摩、御岳ボルダ−)

●自然の岩場での一般的なルール

ボルダリング

●ボルダリングでは支点やロープなどは一切使用しません。
※補足--
このへんがもっとも説明しにくい部分でもあります。以前はトップロープを使用してもボルダリングと呼ばれる場合がありました。これは本来ボルダリングで登れる高さでも下地が悪い場合なども含め、初登者の考え方に大きく左右される部分でもあります。しかし、最近はこのへんを明確に区別する傾向が強く、今後この傾向は強くなっていくと思われます。
だたし、ボルダリングの基本があくまでロープレスである事は昔も今も変わりません。

●ボルダリングでは岩のうえが立てる状態の場合は上に立って終了するのが一般的です、しかしそれ以外の課題もあります。どちらにしろ初登者の指定した終了点(ゴール)に達し、体が安定した姿勢をとれた場合を完登(ASCENT)と認めるのが通例です。

●一般的なボルダリングではシューズとチョークパウダーの使用が許されています。
(クラッシュパッドの使用については、使用する人もしない人もお互いのポリシーを尊重して楽しくやりましょう。)

フリークライミングに共通のルール(重要)

●ケガの責任は自分持ちだという事を常に意識しましょう。
あるプロブレム(ルート)をトライ「する」のも「しない」のも決めるのは自分です。たとえあなたがケガをしたとしても、それはすべてトライする事を決めたあなた自身の責任です(自己責任の原則)。

アウトドアのクライミングでは、たとえ支点が老朽化していて事故に発展したとしてもそれは確認を怠ったあなた自身の責任と思ってください、常に適切な判断をするように心掛けてください。

まず自分の判断に責任をもてる人が独立したボルダラー/クライマーです。これができないうちはどんなに困難な課題が登れようともまだ一人前とはいえないのです。

●アウトドアでのクライミングでは伝統的に”使用する補助手段/道具”(埋込みボルト・ロープなどの安全確保器具も含みます)が少ないほど、良いスタイルとされています。
昔、ある著名なクライマーがこのような事を言ったそうです、
「皆に等しく登る権利があるのではない、皆に等しく(登る)努力をする権利があるのだ。」

「安全」の美名を錦のミハタのようにふりかざす事で、挑戦する心を無視し、自然への尊敬も忘れてしまうような事がないように気をつけたいものです。

●また、その課題(ルート)の初登のスタイルを決める権利は、ほとんどの場合伝統的にその課題(ルート)の初登者が有します。
再登者は初登時のスタイルと同等かそれ以上のスタイルで登る事が原則であり、老朽化した支点の打ち替え等を除き、初登者が設置しなかった残置物を再登者が設置する事は原則として許されません。

●作為的にホールドを作り出す、または無くす目的で岩を削る事(Chipping)は当然許されません。どなただったか失念しましたがある方の言葉を拝借すれば、フリークライマ−とは「自分が登るために岩を改造しないで、自分の体を改造する人達」なのです。

100メートル走が思ったタイムで走れないからと言って、その人がコースを勝手に短くしてしまえばそれはインチキでしかありません、クライミングでもそれは同じです。
この100メートル走での100という長さは、アウトドアでのフリークライミングに例えれば「自然のつくり出した造形」なのです。 しかも、これは一度破壊すれば二度ともとには戻らないものです。

※もし、あなたが登るために初登者が設置しなかった残置物を必要とすると判断した場合は、その課題(ルート)に対してあなたの実力は不足しています。スポーツマンとして不要な支点を設置する事なく、潔くその課題(ルート)は諦めてください。

 

ボルダリング”記録”って?

このスポーツでは他の多くのスポーツと違いコンペティション(競技)のチャンピオンがそのままボルダリング界のチャンピオンというわけではありません。

ボルダラーには競技に出場しない実力者が多くいます、難しいプロブレムの初登や再登(登攀記録を追求する事)と競技で勝つ事とは、ちょうど登頂を目指す『登山』と誰かに勝つ事を目的とする『山岳マラソン』のように、同じ『挑戦』でもまったく意味は違うのです。

実際に高難度プロブレムの多くが普段コンペには出ない人達によって初登されていますし、またその逆もあります。限界グレードを追求する事とコンペで勝つ事のどちらが優れているか?という比較は無意味です。

また、ボルダリングの記録としての価値の判断するには、ただ”登った”という事以外に”どう登ったか?”つまり登ったスタイルが重要視されます。

同じ”登った”事実にかわりはなくとも「登る前にトップロープにぶら下がってリハーサルした」よりは「しなかった」ほうが記録としての価値は高いのです。

これはヒマラヤ登山で酸素器具を使ったより使わないほうが評価が高い事とおなじ事です。クライミングの記録性とはグレードのみではかれるものではありません。



 

ボルダリングを体験したいのですが?

 最近では各地にクライミングジムが増えましたので、一番てっとり早いのはクライミングジムに行く事でしょう。

 多くの商業ジムが貸し靴などギアのレンタルを用意していますので、ほとんどの場合最初は手ぶらでもOKです。
 料金や手続きなどの詳細は各ジムによって異なりますので当ページの広告や各種リンクなどを参考に、直接ジムに問い合わせてみてください。
 初心者であること、ボルダリングを中心に体験したいことを告げれば、より詳しくおしえてくれると思います。

●人工壁(ジムなど)での一般的なルール

 ジム壁でのボルダリングには共通のルールと言えるものは現在の所ありません、しかし、自然石と違い、多くの場合”石の上に立つ”という明確なゴールがありません。そのためゴールに指定されたホールドを明確なかたちで保持する必要があります。というわけでジム等の人工壁では、基本的にゴールホールドを両手でしっかり保持した時点で完登となると思っておくと良いでしょう、これなら誰も文句は言えません。

●自然壁と違い人工壁は自由な組み換えや壁そのものを作り替える事すら可能です(オーナー次第ですが)。発想の限りを尽くして新しいクライミングをつくり出してください。

●ボルダリングの事故の多くは実はジムで起きています。マットがあるからと安心せずに、着地に気をつけて楽しんでください。

●ボルダラーやそれ以外のクライマーも同じ壁を使います、それぞれ迷惑にならないように配慮しながら楽しんでください。

ジムガイドを見る

●コンペティションのルールについて

2000年中頃の段階では、クライミングコンペティションの世界的な流れは大きく3つに分けられる。

●ヨーロッパ諸国を中心とした国際組織”UIAA”(国際山岳連盟)の一部門である”ICC”(国際競技クライミング評議会)による国際ルール。日本山岳協会、および競技団体として実質的にその傘下にある日本フリークライミング協会もこことの関係が深いと言える。
このルールはオリンピック参加も視野に入れたかなり厳密なものだが、それだけにいまだ発展途上なこのスポーツのルールの早急な統一や独占指向を疑問視する声ある。

●アメリカ合衆国を中心とした”X-games”。これはアメリカのスポーツ専門ケーブルテレビ局”ESPN”が主催する、BMX、インラインスケート、スノーボード、はては人工壁でのアイスクライミングまで、いわゆる「アクションスポーツ」を集めた祭典のようなもので、”スポーツクライミング競技”の1999年大会ではボルダリングが採用された。
2000年はトップロープによる「スピードクライミング」が行われる予定。たぶんに商業的側面を持ったものだがそれだけにルールの自由度は高く観客(視聴者)重視の姿勢を貫いている新しい流れの一つだ、しかし一方では行われる種目が一定でなく、選手も招待制をとっている事からコンペティションとしての立場はかなり微妙である。

●最後は2000年に我が国日本で始まった”B-session”(ジャパン・ボルダリング・コンペティション・シリーズ)。
これは上二つの美味しい所は積極的に取り入れつつ、参加者も見る側も楽しいコンぺを目指そうというもの。

◯とにかく競技としての”ボルダリング”はいまだに発展している途中である。それだけに今後思いもしない形の”面白い”ルールがあらわれ、新しい競技として普及する余地が十分にある。


必要なものは?


ほとんどこれだけ!
(写真は一例、色、形ともにいろいろなものが市販されています。)

 ボルダリングを始めるのに最低限必要なものはたった三つ、「ロックシューズ(クライミングシューズ)」と手の汗止め用「チョークパウダー(粉が飛び散らない袋詰めのチョークボールや液体もあります、最近はこれらの使用を義務づけているジムが多くなってきました)」とそれを入れる「チョークバッグ」です。

 自然の岩場で必要を感じたらクラッシュパッド(ボルダ−マット)などもあってもいいかもしれませんが、とりあえずはこれだけでも楽しめるでしょう。
値段はモノによりけりですがシューズとチョークバッグの合計で2万円もあれば普通は足りるでしょう。

 ところで初心者がまず悩むのがシューズのサイズです。ロックシューズ(クライミングシューズ)という物は、とても小さな足掛かり(”フットホールド”俗語で”スタンス”という場合もあります)に立つために、足の指すべてが曲がっているほどかなり小さいサイズのものを履きます、このため、休憩時は脱いでいる事が普通です。
 しかし、これは同時に人間の足の中にある衝撃吸収機能を不自然に殺してしまう事にもなるので、足首のケガの一因になっていますが、小さいサイズでなければ高難度のボルダリングをする事が難しくなります。

初心者の場合には最初はあまり痛く無いものを選んだ方が後々長続きするようです、楽しみながら経験を積んで、自分のサイズを見つけてください。。

※自然壁で着地点が固く衝撃が強すぎると感じる場合などにはクラッシュパッド(ボルダ−マット)を使用するのも一つの選択肢です。ただし、この使用には一部論議があります、使う人も使わない人もお互いを尊重して楽しくのぼりましょう。

各種リンク集「メーカー/輸入元」を御覧ください。


近くにジムがない人は?

各地の自然のボルダ−エリアで仲間を探してみる。
近所のボルダラーを探す。

 どうしても一人ではじめる場合は、自分が着地する場所をよく確かめて最初に少しでも不安を感じるようであればその課題はひとまずパスしましょう。着地姿勢が不安定で誰かのスポット(サポート)を必要とするような課題もパスです。

 いかに高さの低いボルダリングとはいえ、落ちる時の姿勢や打ち所が悪ければ大きなケガや死亡事故につながることもありえます、岩に取り付く前に、自分の着地する地点に岩などが出ていないかをよく確かめてやさしい課題からじょじょにトライしていきましょう。

 最初に肝心なのは成果を求めるよりもいろいろな課題をたくさん登って基礎的な指の力をつけることです。
 その際は指の腱を傷めないように無理をしない事を心掛けてください。指の腱を伸ばしてしまうことを、我々ボルダラー/クライマーの間では俗に「指をパキル」と言いますが、これをやるとひどい場合は一年以上もクライミングができないような事にもなりかねません、ポケットホールド(穴ボコ)の場合は特に注意が必要です(私事ですが、筆者は以前に両手の薬指をパキり、約1年間ポケットホールドを使えませんでした)。

 他にも小さいロックシューズ(クライミングシューズ)を履いているために着地の衝撃が吸収されにくくなっている事も忘れずに。とにかく無理はせずに、まずは十分な経験をもった人物と一緒にボルダリングの楽しさを実際に体験してみてください。


www.Bouldering.net